2023年12月3日日曜日

炭をつぐ

 


 

佐藤佐太郎の

第一歌集『軽風』に

 

炭つげば木の葉けぶりてゐたりけりうら寒くして今日も暮れつる*

 

とある

 

「うら寒くして今日も暮れつる」

から

なんと近代は

逃げ遠ざかろうと

して

きたことか

 

逃げたところで

「うら寒くして今日も暮れつる」

どこまでも追ってくる

どこにでも現われる

 

佐藤佐太郎の主張した

純粋短歌

とは

なんだったか?

 

「うら寒くして今日も暮れつる」

から

逃げないことか

思われる

 

この世の

ひたすらな

うら寒さ

すべてのものの

暮れゆくさま

 

そのなかにい続けて

ただ

炭をつぐ

 

炭をつぐ

 

 

 

 

*大正15年作






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