ともかくも
文化的なことなら
いろいろと見続けてきた
文化
というのは
人工的
ということで
作意的
ということで
つまりは
でっちあげの絵空事
ということ
だが
どんなに頑張ろうとも
鳴かず飛ばずで
終始しているばかりの
ひとたち
ちょっぴり
成功らしきものを
いちおう
手にはしたひとたち
大成功
といっていいだろうものを
まずは
手に入れたひとたち
いろいろなひとたちを
時代
時代
つぶさに
見てきたけれど
どんなひとたちにも
共通しているのは
時代の変化や
風潮の変化や
好みの変化に
ついに
だれひとり
抗することはできなかったこと
忘れさられはしなくとも
すっかり色褪せ
歴史の一資料のようになり
さもなくば
懐メロみたいに位置づけられ
若いこころを
ときめかせたりは
ぜったいに
二度としない
博物館の
埃をかぶった動物標本の
よう
小説に一家言持つかのような
若者たちが
野間宏をまったく読んでいないことに
驚かされるのだ
どれだけ
吉行淳之介が
文壇の権力装置だったか
もう
だれも気にもしないことに
驚かされるのだ
ひととおり
辻邦生を
ぜんぶ読んでおかなければ
という圧のあった
時代があったことを
知らないひとがいることに
驚かされるのだ
たいした見識でもないのに
なにかというと
加藤周一のご意見を伺うといった
雑誌やテレビばかりで
過去の花田清輝や
マスコミに出ない吉本隆明を思うひとは
鼻白むばかりだったのを
ぜんぜん知らないひとばかりなのに
驚かされるのだ
ともかくも
みんな
流れ流れて
消えていってしまった
過ぎ去ってしまえば
なかったも
おなじ
なんにも
なかったのと
おなじ
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