2024年2月27日火曜日

なんにもなかったのとおなじ

 

 

 

ともかくも

文化的なことなら

いろいろと見続けてきた

 

文化

というのは

人工的

ということで

作意的

ということで

つまりは

でっちあげの絵空事

ということ

だが

 

どんなに頑張ろうとも

鳴かず飛ばずで

終始しているばかりの

ひとたち

 

ちょっぴり

成功らしきものを

いちおう

手にはしたひとたち

 

大成功

といっていいだろうものを

まずは

手に入れたひとたち

 

いろいろなひとたちを

時代

時代

つぶさに

見てきたけれど

どんなひとたちにも

共通しているのは

時代の変化や

風潮の変化や

好みの変化に

ついに

だれひとり

抗することはできなかったこと

 

忘れさられはしなくとも

すっかり色褪せ

歴史の一資料のようになり

さもなくば

懐メロみたいに位置づけられ

若いこころを

ときめかせたりは

ぜったいに

二度としない

博物館の

埃をかぶった動物標本の

よう

 

小説に一家言持つかのような

若者たちが

野間宏をまったく読んでいないことに

驚かされるのだ

 

どれだけ

吉行淳之介が

文壇の権力装置だったか

もう

だれも気にもしないことに

驚かされるのだ

 

ひととおり

辻邦生を

ぜんぶ読んでおかなければ

という圧のあった

時代があったことを

知らないひとがいることに

驚かされるのだ

 

たいした見識でもないのに

なにかというと

加藤周一のご意見を伺うといった

雑誌やテレビばかりで

過去の花田清輝や

マスコミに出ない吉本隆明を思うひとは

鼻白むばかりだったのを

ぜんぜん知らないひとばかりなのに

驚かされるのだ

 

ともかくも

みんな

流れ流れて

消えていってしまった

 

過ぎ去ってしまえば

なかったも

おなじ

 

なんにも

なかったのと

おなじ

 





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