指針を失った者たちが集まって桜を待っている
中世の暮れ方
お茶の淹れかただけは繊細になって
まだ昼前だというのに
昨今の若者の老人ぶりが鋭い
25歳になろうとするひとりの男性が希少鑑賞花ライメネアの栽培
ふいに志したのも
粉末状にした海龍の皮膚を混ぜた茶を喫する席
順番を待って直立している時に
(この海龍茶会では参加者は直立不動で順番を待つ)
左目の奥に光の球の出現を感じ
その光の中からライメネア栽培の温室が見えてきたという
はじめて華やかなビニールの晴れ着を来て茶会に来てみたメネは
三番目の会に参加するので
しばらく外の庭の大理石のベンチに座って待っていたが
庭木のあいだに静まる池から
たぶん10㎝ほどもないのではないか?
ごく短い宝剣が浮き上がってきて
浮いたまま池の上に停止するのに気づいた
メネは実業家の父に伴われて茶会に来たのだったが
宙に浮いた宝剣を見て
じつは自分こそが父であった!
しかも万物の!
と直観し
若い女性の外見がつかのまの蛹に過ぎないとわかって
羽化直前の流動状態に体内が入っていく
むず痒さと痛みと味わったこともない類の快楽に
くまぐまの細胞を震わされた
希少鑑賞花ライメネアの栽培を志す25歳になろうとするひとりの
華やかなビニールの晴れ着を来て茶会に来てみたメネが
ごく間近に接近しながらも
出会いもしなければ
たがいを意識しあいもしない
まだ昼前の
中世の暮れ方のことであった
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