2024年5月15日水曜日

シト

 

 

ひとを殺すのが楽しかった頃

なによりいちばん楽しかったのは

親しい友のガールフレンドを彼の目の前で裂いたり

先生の娘や市長の娘を彼らの目の前で犯したりすること

犯してから腹を裂くのだけれど

温かいというより熱いほどの内臓にぐずぐずと手をめり込ませて

ずくずくさぐるようにして引き出すのが

ほんとうに楽しかった

 

そんなふうに

ひとを殺すのが楽しかった頃

夕暮れはいつもせつなくうつくしく

そのうつくしさに応えるために

明日もしっかりひとを殺そうと思ったものだった

なぜか夜明けはひとを殺す衝動に合わず

ともすれば嫌悪したものだ

夜明けはどれも

これも

 

ああ

町も殺されたがっている!

文化などと呼ばれる

あらゆる生活臭の堆積も

生きざまの垢も

行き損ないどもの途惑いの跡も

 

殺すわたくしはだれか

って?

 

わたくしはひと

ではなくて

シト

 

使徒

と漢字を当ててみれば

ちょっとは

箔がつくかしら?





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