2024年5月15日水曜日

深夜もやっている喫茶店にぼくらはいて

 

 

 

暴力によってしか持てないものは、実際には持ってなどいないのだ。

クロムウェル

 

 

 

 

すこしでも

生き物のいのちを奪わないように努めて

生きようとしている者たち

ではないのだから

いのちを奪われていってもしかたがないんだよ

 

あつし君が言う

 

深夜もやっている喫茶店に

ぼくらはいて

もう

夜の1時半

しあわせな時間だ

 

人間はほかの生き物を平然と殺して

のうのうと生きているだろ

だから

いつかどんなにひどい殺されかたをしても

当然の報いなのさ

 

みのる君が言う

 

そうだよ

人間に殺された生き物たちの念が

ときどき人間に入り込んで

仲間であるはずの人間にむかって

復讐を遂げるんだよ

 

ひろし君が言う

 

この喫茶店に来ると

ぼくはいつも

大好きなモカを飲んで

その次には

マンデリンだとか

ブラジル・サントスとか

キリマンジャロとか

飲んでいって

たまには

トラジャとか

ブルーマウンテンなんかも

飲んだりする

 

高価なのに

ブルーマウンテンには

あまり感心しないのだけれど

夜の2時過ぎに飲んでいたりすると

とんでもなく恵まれた

ふしぎな時間を

生きている気になる

 

それにさ

どうせ

ひとを殺したやつらは

来世でおなじように殺されるしくみなんだよ

ちゃんと

転生のしくみがわかっていれば

そんなこと

わかるはずなんだけれどね

 

ひろし君がまた言う

 

それじゃあ

「罪もない」ようなのに

いま殺されていっているひとたちも

前世では

おなじようにひとを殺した

って

わけかい?

 

あつし君が聞く

 

そうなんだよ

おそろしいほどに

まったく同じ殺されかたを

するように

できているんだよ

 

ひろし君が答える

 

ということは

いまの人間が豚や牛や鶏にやっているように

毎日毎日

大量に機械的に殺して

解体して

きれいな食肉に

されていくようなことを

いつか

いまの人間たち全員がやられる

っていう

わけかい?

 

みのる君が聞く

 

そうだよ

まったく同じように

ツーッと首の動脈を切られて血抜きされたり

内臓をゴソッとくり抜かれたり

ツルッとした肉に

きれいに切り分けられたりしていく

っていう

わけさ

 

ひろし君が答える

 

こんな話のながれを聞きながら

ぼくは夢想する

来世はぼくも

コーヒー豆に生れ

摘み取られて

干されたり

煎られたりして

さらには挽かれて

それなりの名のついたコーヒーになって

深夜の喫茶店で飲まれたり

無名のコーヒーになって

安っぽい紙コップに注がれて

添加物と混ぜられて缶コーヒーにされたり

するのかもしれない

って




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