2024年10月30日水曜日

東京で雨だった

 

 

 

ローマで雨だった

 

という

映画があった

思いながら

東京の10月末の雨のなかを

歩く

 

でも

違っていた

 

思い出した

思った

映画のタイトルは

ロベルト・ロッセリーニ監督の

『ローマで夜だった』

リチャード・ブルックス監督の

『雨の朝巴里に死す』

ちょっと混合させてしまい

『ローマで雨だった』

などと

架空の映画タイトルを

思って

しまったらしい

 

『雨の朝巴里に死す』は

エリザベス・テイラーが出ていたのが

唯一の取り柄で

なんだか

あまり面白くなかった

 

フィッツジェラルドの『バビロン再訪』が

原作というのに

 

でも

The Last Time I Saw Paris

という原題はいい

 

最後にパリを見たのはいつだろう?

ぼくの場合

などと

ふり返ってみる

昨年でも

一昨年でも

ない

 

醜く

おぞましく

チープに

すべて画一的になった世界に

もう旅には出て行かない

と決めて

どのくらいに

なる

だろう?

 

ふり返ってみる

昨年でも

一昨年でも

ない

 

東京で雨だった

 

そう思い出す時も

来るのか

来ないのか

 

まだ来ない

未来をも

ふり返ってみる

ふりもしてみる

 

じつは

うつくしい

東京の雨

雨の

東京はうつくしい

24時間

東京に居続けないとわからない

うつくしさ

 

雨の東京を嫌がる人は

東京の人では

ないだろう

 

東京で雨だった

 

それだけで

幸福な

ことだったね

 

雨の降る時

雨の東京から

雨の東京のどこかへ

移動する

 

雨の東京から

離れない

 

離れることが

ない

 

雨の東京から

帰っていくところはない

 

帰っていく先も

東京

 

東京で雨だった

 

東京の雨がうつくしい

 

それだけで

幸福な

ことだったね

 

雨の東京がうつくしい






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