2024年9月2日月曜日

ガジュマルの木の鉢

 

 

 

よく行くスーパーマーケットに

ガジュマルの木の鉢が

ひと鉢だけ

また入荷した

 

夏のはじめ

このスーパーマーケットの花売り場に

ひと鉢のガジュマルの木が入って

なんだか気になった

 

YouTubeの心霊番組で

ガジュマルの木に

沖縄の妖怪キジムナーが宿る

と聞いた後だった

 

沖縄で根付いている木ならともかく

鉢のガジュマルを手に入れても

キジムナーの守護は

得られるわけではあるまい

 

そう思って

買ってもしょうがないと判断し

毎日見て過ぎるだけだったが

不思議な親しみをガジュマルには感じた

 

すでに家には植物がいっぱいあるし

いろいろ持っていると

結局戸外の街や森林に植物があるのと

家にあるのとだんだん同じことにもなる

 

そんなふうに考えて

毎日スーパーマーケットに行くたび

花や植木の売り場の前で

しげしげとガジュマルを見て帰っていく

 

そうこうするうち

知りあいからプレゼントで

洒落た鉢に植わったガジュマルが

ふいにプレゼントされてきた

 

なにか観葉植物を贈ってくれるといわれて

なにが来るのかなと想像したが

まさかガジュマルだったりしてね

と冗談に家で話ながら待った

 

そうしたら本当にガジュマルだったので 

そうか こいつが家に入り込んで来るのを

スーパーであらかじめイメージも見せられ

予兆を感じさせられていたわけかとわかった

 

これほどの予兆を与えられた木だから

小さい鉢植えではあるけれど

どうしたって妖怪キジムナーが

この木には宿っているにちがいない

 

この木がやって来てから

廊下で温いようなだれかを感じたり

ちょっと雰囲気を感じるようになったのは

たぶんそのせいなのだろう

 

ガジュマルがやってきてからも

スーパーマーケットのほうのガジュマルは売れず

店に行くたびに通りがかって

挨拶のようなものは続いた

 

おまえはぜんぜん売れないなあ

などと心のなかで言葉をかけていたが

真夏になってから

とある日にふいに姿を消していた

 

おや ようやく買われていったか

それはまあ よかったよかった

と門出を祝ってやるような心持ちになって

ガジュマルのない棚を眺めやった

 

八月も終わろうという日

『台風と呼ばれてはみたけれど』といった感じの

なんちゃって台風の10号君が

長雨を降らしている頃のことである

 

スーパーマーケットの花売り場の棚を

いつものように一瞥すると

おやまあ また新たなガジュマル君ひと鉢

ひょいと置かれて客を待ちはじめてるじゃないの

 

 




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