2026年1月27日火曜日

蒼空


 

 

イエスはかがみ込み、

指で地面になにか書き始められた。

 ヨハネによる福音書 8-6

 

 


 

国とは肌があわない。

こんなことさえ、国ではいわないで、

黙っている。

世の中から恩を受けたことって、ない。

きれいなたんぽぽ。

いまがいちばんいいってわけかな。

だんだん死んでいく。

でもいろいろ旅してみると

充実して死んでいけるところもあるとわかる。

わからないやつが国にしがみつく。

 

だれもいないのにふいに

煙草がにおう。

あれはすてきだ。

とつぜん荒野がひろがる。

遠いほど文明は貴重だ。

遠ざかるにかぎる。

遠くからなら

雲が雲にみえる。

 

やはり世界は劇だ。

大地も天空も狂っている。

 

まったく。

存在しやがって。

風なんていったい

どう考えだしたものだか。

みごとだ。

出る幕はもうない。

たしかに、ない。

 

きょうにんげんをやめた。

これからぼくのことばは

宝石に露に風になるそ。

書くそばから消え失せることばを

あなたは書き続けられるか。

 

 

 

 

 

[初出] NOUVEAU FRISSON (ヌーヴォー・フリッソン) numero 35 (1995630)
編集発行人 駿河昌樹
発行場所 東京都世田谷区代田115、ホース115205 155





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