2012年9月27日木曜日

嵐が過ぎて行った…

  

嵐が過ぎて行った

激しかった雨が上がっては
また降り
また弱まったが
小雨が降り続いている

カーテンに軽く触れながら
外の様子を見ている
涼しい空気が
窓から入って来ている

住んできた様々な家
あの窓
この窓から
こんなふうに
嵐の後の
まだ雨の降る外を
眺めていたことがある

その頃に
親しかった人
ともに暮らしていた人は
外出中で

あるいは
台所のほうにでも
いて

まだ
あの人も
この人も元気で

あの頃
気がかりだった事
煩わされていた仕事
どれもこの先
どうなっていくか
予想もつかぬ
ままで

そうして
さまざまな時々を
思いめぐるうち
ある一瞬に
思いは収斂されていく

それまでの生活が
すっかり壊れ
避難所のように身を寄せた
違った場所で
違った人と
違った自分を
急ごしらえしながら
迎えた
はじめての嵐

雨が小止みになったら
買い物に出ようと
薄い緑のカーテンに触れて
外を見ていた
瞬間

窓から入って来る
涼しい空気を腕に受けながら
数十年の後
いつしか
自分に
振り返られるとも知らず
外の様子を見ていた…

破れ落ちそうに
重い心で
方途を失って
窓越しに
立ち尽くしていたが

しかし!

身も心も
なんと軽い
軽い
若者、わたしよ
踏み越え
吸い込んでいくべき
長い時間と
空間の数々とを
前途にいっぱいに
抱えて…


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