美人といっていい女たち
三人が
たまたま
その車両に乗り合わせていた
空いていた
いちばん濃い顔立ちの女が
急に化粧を始める
化粧水を
はげしく叩くように
顔に付けた
それから
顔をひどく顰めたり
眉間に皺を寄せたりして
眉を描いたり
アイラインを引いたり
隣りに座っていた
知的なOLふうの女が
露骨に見つめいないながらも
横目に様子を窺っていた
自分だけでも
ちゃんとしないといけない
と思うのか
姿勢を正して
正面の窓外に目をやったりする
三人目の女は
ドア口に立っていて
化粧している女を見つめていた
またたきもせず
見つめていた
大柄なこの女は端正な顔立ちで
どこかの彫像にありそうな
威厳と美とを湛えていた
残酷なまでに
またたきもせず
見つめ続けていた
この三人の女たちを
この全員を
わたしは堂々と
見つめ続け
美しさと
人格と
宿命や運命の
品定めをしていた
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