フランスで知りあったオジサン
25歳も年上だった友人ピエールは
ぼくをよく別荘に連れていってくれて
庭の納屋や屋根裏部屋の倉庫で
第一次大戦中のフランス軍の重い銃や
ナチスの爆撃機が落としていった
爆弾の大きな破片なんかを見せてくれた
ときどき指を口にあてながら
「これは女たちにはナイショだぞ
と念を押しながら
ずいぶんと時代物のヌード写真や
エロチックな挿絵満載の雑誌などを
あれやこれやと見せてくれた
けれども可哀そうなピエール!
それらはどれもずいぶんとお上品で
なんと可愛らしいエロチック趣味
こんな程度で興奮してしまえて
女たちにはナイショにしなきゃなんて
思い続けてきたあなたのエロスが
わびしく哀しく可愛らしかった
ずんずん突きつめ羽目を外して
異常の果てまで行こうとしても
いずれどこかで留まるか生き倒れるか
戻って来なければならないから
あなたのレベルで留まってみるのも
それはひとつのエロスとのつきあい方
ともあれあなたの心臓も4年前
急停止してエロスも飛び去った
現代から見れば少年のようだった
いたいけなあなたのエロスに向けて
蝋燭よりもミルクをコップ一杯
お供えしようかとぼくは思う
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