狂ったのではないかと
以前なら思いもしたかもしれないが
いつからか
夜も朝で昼も夜を感じるようになっている
もう慣れた
どんな時もその場その時以外の過去がいっぱいそこに貼りついて いて
いないはずの人たちが踊っていたり
机に凭れてなにか考えていたり
お茶を淹れようか?などと聞いてきたりする
もう慣れた
さまざまな年齢の子どもの自分たちが青年時代の自分たちの
足に腕を絡ませて遊んでいたりしていて
昨日の自分が、ほら、いま思い出した本を持って来てくれている
おとといの自分がランプを近づけてくれる
もう慣れた
時が矢のように一方向に進み続けて意識はその一点にいるだけな どと
思い込んでいられる人たちにもう合わせることができないが
こまかく語ってみるのも面倒くさ過ぎるのでむしろ黙ってしまう
もう慣れた
いいことも悪いことも本当に観察点の位置によるだけのことで
たとえ何処かで殺されたり事故に遭ったりしてもすべてには操りの 線が
たくさんたくさん繋がっているのが見えるようになった
もう慣れた
生きていても死んでいてもあっけにとられるほど何も変わらず
もし変ったと見えるとすれば変わるものの側にいて見ているからで
本当の自分は変わらないものの側にしかいないと体感するようにな った
もう慣れた
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