17年以上前に住んでいた家の掃除の様子を思い出す
突然思い出す
細々とつまびらかに
ありあり
ここが済んだらあそこの台の下に掃除機の先を突っ込んで
椅子をテーブルから出して
離して
また入れ直して
椅子を
すべての椅子を
真夏だから汗がぽたぽた落ちる
真冬だから指先がかじかむ
17年も経っているから真夏も真冬もいっしょに蘇る
いまは春
いまは秋
今日は台風
今日は秋雨
ぜんぶがいっしょに蘇る
畳の部屋を畳モードにして掃除機をかける
台所の床の上を床モードに切り替えて掃除機をかける
掃除機の嫌いな猫がむこうの寝室へ逃げ出した
もうすぐ宅急便が来るはずだが
掃除が終わったら買い物に出なければ
大降りにならないうちに
夕方の夜桜見物に遅れないように
ちょっと離れたあの神社に紅葉を見に行く暇はあるかしら
17年前の家の中のすべてがこんなにありあり見える
床のあそこに傷があり
剥がれてしまっている敷居の端があり
猫がガリガリ傷つけた襖があり
掃除機の細い先端でも入れづらい細すぎる隙間がある
全く歳を取っていない意識が17年前の家を見ている
あの頃ときどき背後に
あるいは自分の体にぴったり重なるように
なにか他の人が来た気がすることがあったが
今のわたくしだったか
時間が本当に過ぎ去るかどうか
流れさえするものかどうか
誰も結局はわからないのだから17年前のあの家と今のわたくしと は
ぴったり繋がっていないなど
誰が言えよう
こんなにありあり見えて
掃除機をフル回転させながら17年前の家の中をここから向こうへ
向こうからまたこちらへと動きまわっている
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