2016年2月9日火曜日

剃刀の上

  
日本の老詩人たちは
だれにしろブルジョア
会えばがっかりする
自分の詩商品を
おゝどうか読んでくれ
おゝ買っておくれ
などと聞かされては
アメ横のいんちきトロ売りと
変わるところがない
詩人はかっこよくなきゃ
老いとともに物など
どんどん棄てて
それでも感性だけは研ぎ
学びだけは激しく
なお新たな言語を学んで
未知の詩歌を求め続ける
未知の思考に出会い続ける
そうでなければ
詩人などとは呼べない
剃刀の上に立つ定め
それが詩人で
だからこそ人は見上げる
あいつオカシイんじゃないか
あいつなにを無意味なことを
そう言いながら人は
自分が絶対賭けられないものを
公然と戯れに賭けて
谷底に呑まれていく詩人を
ひょっとしたら唯一
人間の代表じゃないかと
畏れはじめていく




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