むずかしい表現をするのは簡単だから
それだけはなるべく避けようとする
物語めいたことを書くのも
生活雑記をダダダダダと書くのも
まるで方途を失った老人詩人のようになるから
それもなるべく避けようとする
そうすると並べられていく言葉は
ポカンと口を開いて
なにも考えていないような
あっけらかん少年の頭のなかの
間の抜けた粗雑な思いの
置き石のようになるけれど
じつは置き石のあいだの
空いたところのあっちこっちに
人は思い思いの自分の石を置いたり
大事だったものの幻影や
空(くう)なんかさえ置いたりするのだから
よっぽど好都合ってことになるわけさ
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