故郷に行ってみよう
ひさしぶりに
軽いかっこうで
行ってみよう
着がえも持たず
列車の中で
読むものも持たず
窓外の流れを
たゞぼーっと眺めて
飽きたら
スマホでも見て
たゞヤカンだけは
持って行きたかった
飲む水が要るから
それに手ぶらだし
ヤカンくらいは提げて
のんびり行こうと
取っ手を握って
玄関まで行った
夢の中だったのに
よく気づいたもの
ヤカンはやっぱり
ふらつくのに不便だし
東京駅の雑踏の中でも
たぶん手持ち無沙汰
乗車券を買う時も
持ったまゝでいようか
脇に置くことにしようか
どちらもちょっと
ヘンに見えそうだしと
よく気づいたもの
夢の中だったのに
故郷に行ってみよう
ひさしぶりに
という思いだけは
目覚めてからも
しかし鳴り続けた
幼少時の五年だけ
居続けた故郷
家族の中で自分だけ
執着しているところ
童謡や子供の歌に
出てきそうな
心に隔たりのない
原野草原小さな町
行く必要などないし
歳月とともに
ますます必要がなくなるが
でも本当に
軽いかっこうで
行ってみよう
着がえも持たず
列車の中で
読むものも持たず
窓外の流れを
たゞぼーっと眺めて
飽きたら
スマホでも見て
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