なにか記そうと思って
言葉を思いの手指で選んだり手繰り寄せたりし始めると
たいていの言葉の碁石は粗く
空疎で曖昧で
なにを記そうにも記しようもないと感じる
言葉がまだ言葉になっていないと感じる
言葉など放っておいて
こんな時に歩きにでも出ようか
草いじりでもしようか
掃除でもしようか
などと思っても
「それでは、さあ、始めるか」
などと弾みをつけ
力を呼び起こすのにさえ
じつは
言葉を使っている
それも
自分の言葉でなどない
誰もがヒョイと口にしてしまう
紋切り型の定型句を
定型句ではいけない
などと青臭いことが言いたいのではない
定型句の威力
この怖さを知ろうとするのにさえ
言葉にまた底なしに踏み込んでいかねばならないのだ
0 件のコメント:
コメントを投稿