2018年3月15日木曜日

春愁



あの国々の植物図鑑も
鳥類図鑑も
小動物図鑑なども
たび重なる転居のさなか
手放さざるを得なかったので
この春シセルの庭先に来て
鳴いているはずの小鳥たちの絵を
この春わたしの書架に凭れて
確かめることはできず
メリッサの花壇に次々開く
あれらの花々の学名を
調べ直すこともできない
新しい図鑑ならいつでも買えるが
ヨハンやルイザが鉛筆で印した
なかなか目にできない草が
どれとどれだったか
確かめ直すことはもうできない
ヘレーネが挟んだ押花が
まだどこかに残っていなかったか
ゆっくりページをめくりながら
さがしていくことも
もうかなわない



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