ほかのだれかやなにかであろうなどとは求めたこともなかった！

 

こどもの頃どんなに夏の暑さが大好きだったか！

来る夏来る夏の暑さにつつまれて大はしゃぎだった心を

わたしはいつでも新鮮に思い出せる！

大気はぴちぴち特別なうごめきに満ち

全身でそれにこたえて汗をたらたらと流し続けて

色と甘みをちょっと加えた程度の氷菓子が天上のごちそうのよう

そこに畳や簾や団扇や風鈴が

世界のはじっこのこの列島ではぴったりの楽しさ！

たゞからだに押し込まれて湿った暑さのなかにいるだけで

わたしはこの列島の夏でこの列島の夏がわたしだった

ほかのだれかやなにかであろうなどとは求めたこともなかった！