自動ドアが開く
エントランスに入る時
通路のむこうに他の住人ふたりが見えた
中年の女性と
その息子らしい若い太った男性
なんの問題もないが
蒸し暑い夜だったので
エレベーターに他人と乗り込まなければならないのが
面倒に感じる
こういうことを面倒に感じるじぶんの感情の動きを
面倒に感じる
自動ドアはふたつある
エントランスに入る時には
もうひとつ自動ドアを通らないと行けない
それを抜けると
20メートルほどか
通路を歩き
左に折れるとエレベーターホールに出る
おや?
だれもいない
来ていたエレベーターに
もう
あのふたりは乗って
上がっていってしまったわけか
待ってもくれずに……
と思う
すぐにエレベーターを呼ぶボタンを押す
すると
二基あるエレベーターが
ふたつとも同時に開く
あれ?
二基とも中は空だ
エレベーターの回数表示を見ても
二基とも一階を指している
階段ででも上がっていったのだろうか?
そう思うが
階段はエレベーターホールにはなく
エントランスからの通路の途中にある
通路のむこうに他の住人ふたりが見え
中年の女性と
その息子らしい若い太った男性だった
と
さっき見えたが……
そう見えただけだったか
と思い直す
それだけのことだったか
と
蒸す暑い夜だったので
いろいろなことに面倒を感じるじぶんの感情の動きを
面倒に感じる
のを
増やさないために
これだけの思いで止める
それだけのことだったか
と
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