2020年11月4日水曜日

智拳印


ことのほか優秀であったのはたしかにせよ

どうして空海があれほど天皇の心を掴み優遇されるに到ったのか

仏教論で所詮は煙にまいただけなのではあるまいか

そう思ってきたところで見つけた『孔雀経音義』にある伝説は

伝説とはいえ腑に落ちるものを提供してくれた

嵯峨天皇臨席の宗論の際に

空海は即身成仏の教義を説き

諸宗の高僧たちはなにひとつ問難できなかったそうだが

嵯峨天皇ひとりは決定的な批評を行う

「教義は了解したが、その証拠を見たい」

天皇も天皇なら空海も空海で

彼はすぐさま智拳印を結び精神を凝らすと

金色の大日如来に変貌して光明を放った

嵯峨天皇はこれによって空海に信順し

高僧たちも真言の法門に帰依することになったという





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