2020年12月25日金曜日

そんな甘っちょろいものでなどない

  


しら雲はかげをおろしていゆくなりあはれいづこにわれは救はる

                                                                                       前川佐美雄

 

 



文章であっても

詩歌であっても

ひとのものを読んでいると

あゝ これは

読んでもらいたくって書いているんだな

読んでくれるひとがいると思って

思い込んで

書いているんだな

そう感じさせられる時がある

 

それはそれでいいし

それはそれで

しあわせなことかもしれないが

そんな文章も

詩歌も

もう

わたくしは書くことができない

 

もう

読んでくれるひとはいない

と知っているし

もう

読んでもらいたいひとも

いないから

 

そんなわたくしの書くものは

なにに似ているだろう

消えていったひとたちや

先に死んでいったひとたちへと送る

遺言書に似ている?

 

いや

いや

そんな

甘っちょろいものでなど

ない





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