しら雲はかげをおろしていゆくなりあはれいづこにわれは救はる
前川佐美雄
文章であっても
詩歌であっても
ひとのものを読んでいると
あゝ これは
読んでもらいたくって書いているんだな
読んでくれるひとがいると思って
思い込んで
書いているんだな
そう感じさせられる時がある
それはそれでいいし
それはそれで
しあわせなことかもしれないが
そんな文章も
詩歌も
もう
わたくしは書くことができない
もう
読んでくれるひとはいない
と知っているし
もう
読んでもらいたいひとも
いないから
そんなわたくしの書くものは
なにに似ているだろう
消えていったひとたちや
先に死んでいったひとたちへと送る
遺言書に似ている?
いや
いや
そんな
甘っちょろいものでなど
ない
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