2021年1月10日日曜日

ありがとう!コロナちゃん!

 

 

わたしが一番きれいだったとき
わたしはとてもふしあわせ
わたしはとてもとんちんかん
わたしはめっぽうさびしかった

茨木のり子『わたしが一番きれいだったとき』

 


 

体調良好でいられるか

病気になるか

運不運でしかない

生きるも

死ぬも

運不運でしかない

 

この世での

そんな当然の覚悟というものを

忘れた連中が増えると

この世は

騒がしくなってしまう

この世は

生きづらくなってしまう

 

どうなろうと

ああもうダメか

これっきりか

ついに来たか

…ということで済ませば

いいじゃないか

どうせ

そう思う意識も

数分後にはなくなる

そうしたら

悩む者も悔やむ者も消えて

悩まれる症状や

悔やまれる原因も消えて

一切合切なぁんにも

なくなってしまう

後は永遠の平穏の

あるばかり

 

わたしは少年時代の六年間を

病気のせいで

完全に活動停止させられた

その六年間を

まわりの少年少女は

歌ったり跳ねたり飛び回ったり

少年少女時代を謳歌していた

世間も高度成長期でギラギラと

明るく楽しく貪欲で活動的で

元気はつらつオロナミンCだった

スカッとさわやかコカコーラだった

 

わたしはそれらを

ただずっと見続けていただけ

歌ったり跳ねたり飛び回ったりせず

少年少女時代を謳歌などせずに

明るく楽しく貪欲で活動的な

元気はつらつオロナミンC

スカッとさわやかコカコーラな

ギラギラの高度成長期のかたわらで

わたしひとりだけ停止し停滞し

すべてを制限され禁止されて

ナンバンギセルのように青白く

ナマコのようにゆっくり蠢く

不活動の生を余儀なくされ続けて

 

みんな止まってしまえばいいのに

みんな停滞してしまえばいいのに

そう思いながらナマナマとしてきたが

ありがとう!コロナちゃん!

ついにわたしの願いを世間に

バサッとザバッとぶちまけてくれて!

本当にありがとう!

こんな世界がわたしは見たかったんだ

もっともっと何年も何十年も

どうか続いてくれますように!

ありがとう!コロナちゃん!

わたしが停止し停滞した六年間を

世界中にたっぷり経験させてやっておくれ!





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