2021年1月19日火曜日

もう帰路というものなど


  

なんであれ

親しいひとに

しりあいに

言いたいことがあった頃

早春は

ひとりでいると

なにか欠けているようで

雑木林のほうなどに

出かけて

はやくも芽を出した草や

枯れ枝の先の

まだ堅い芽など見て

ゆうぐれが迫ってくると

灯り出した街灯を

ちょっとうるうる

見つめながら

帰路を急いだりした

 

言いたいことが

もう

なにもなくなってみると

早春は

ひとりでいても

なにも欠けていない

すばらしい

ひとつの季節

雑木林のほうなどに

やはり

出かけたくなり

はやくも芽を出した草や

枯れ枝の先の

まだ堅い芽など見て

ゆうぐれが迫ってくると

灯り出した街灯を

なに思うこともなく

見つめながら

もう

帰路を急いだりも

しない

 

もう

帰路というものなど

ない






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