春がやってくる特別な朝
原野を見わたして
やってくる春を
待っていてみたことなど
あったかしら?
長いようで
短かった
この人生のなかで
朝の原といっても
もちろん
どこの原でも
いいわけではない
朝の原は
大和国の歌枕
大和にはさんざん旅して
肌寒い早朝
宿の窓からカーテン越しに
草はらを窺ってみたり
ちょっと外に出て
震えながら霧や霞のなかに
立ってみたことは
あったけれど
……そんなことで
よかった?
所在なげに
ひとり
霞のなかに
立ってみていたことが
あった
というだけで
よかった?
源俊頼
春のくる朝の原を見わたせば霞もけふぞ立ちはじめける
『千載和歌集』巻第一 春歌上 冒頭歌
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