2021年5月9日日曜日

パーマネント・ヴェイケーションの子

 

 

初夏にもなると

気温の底がぐんぐんと上がってきて

たぶん血圧もいいぐあいに上がるのだろう

それだけで日々は楽しくなる

楽しさは血圧の適度な上昇ではないかと

あらためて思う

 

草木の葉はみどりを増し

ぐんぐん伸び広がって

世界はみどり色になっていく

楽しいことが昔いろいろあった季節だ

どの時代にも初夏は繋がっていて

今ここにないことも場所も

今ここにいない人びとも

なくなったわけではない

いなくなったわけではない

みんなあの頃のままにあると気づく

 

さあ

次の休みには海に行こう

山にも行こう

そんなふうに初夏を過ごした年々は

ぼくがその気になりさえすれば地続きだ

海にも山にも行かない人たちに

合わせすぎてきた歳月もあったが

今からふり返ればそれらはカッコに括って

さっぱり消去してしまってもいい

生まれながらのぼくの本性を変えようとして

ついに変えられなかった人たち

母や父からはじまって

あの友も伴侶さえもじつは

ぼくをねじ曲げようとしてきた

一見ぼくのためだったかのようで

じつはぼくの最大の敵だった人たち

すべてをカッコに括って捨て去るべき時節だ

 

さあ

次の休みを待つまでもなく

パーマネント・ヴェイケーションの子

ぼくの本性をもう覆い隠しもせず

みずから海になろう

山にもなってしまおう

書を捨てるだけでなく町も捨てよう

人目ばかりか

価値や生きがいへのちまちました忖度も捨てて

手のおえない天性のいたずらっ子

ながらく猫かぶってきたのをさっぱりやめて

真性の初夏へと飛び出していこう





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