2021年6月16日水曜日

それはわたしが書くよ

 

“We are the priests of power”, he said.

George Orwell 1984

 



昨日見終えたDoug Limanの《Jumper》(2008)で

今年は100本の映画を見終えたことになる

あまりに少なくて情けないが

昔よりもはるかに忙しい日々を送っているのだからと

……いや、これも自分の怠惰さへの

むごたらしい甘やかしになってしまうだろう

 

Jumperは瞬間移動能力があることに気づいた青年のSF譚で

SFとしてはあまりに底の知れた駄作だが

これでもかと瞬間移動場面をあまりに使いすぎる気前のよさが

なんだかお得なような馬鹿にされているような作であるところが

ちょっと気持ちがいい

Hayden ChristensenとJamie Bellのふたりが突然

東京に瞬間移動し

2007年時点の銀座や渋谷がふんだんに映されるのを見るのは楽しく

とはいえ東京人から見れば

銀座から渋谷までふたりが数分で歩いてしまうのは

さすがにチープすぎるだろ?

と突っ込みたくなるところも

まあ

楽しいといえば楽しい

 

そんなことを思いながらこの駄作を見ていると

それにしても

この瞬間移動の概念は

現代にあっては全くSFどころではなく

これを再認識するためにわざわざ今見たのだものね

と自分に念を押したりする

 

そういえばHayden Christensen演じる主人公の母親役を

中年になったDiane Laneが演じていて

なんとも時代離れした

奇妙な懐かしさに心の一部が巻き込まれそうになってしまった

1984年頃には12位を争う世界的女優だったのに

19歳以降はすっかり凋落し

映画に出ても鳴かず飛ばずだった

ふたたび注目されるようになったのは

2000年になってからという

 

そういえば

Diane Laneが鳴かず飛ばずだった15年ほどの間に

わたしの最も冒険に満ちた奇跡の日々があったものだったと

いま思い返される

 

ジョージ・オーゥェルも村上春樹も

1984なるものを書いたが

その後の年々が

じつはすごいのさ

 

それはわたしが書くよ





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