2021年10月14日木曜日

移動できる自由をちょっと手に入れてみた草葉

 

 

叔父の葬儀の際

十数匹の鈴虫を寺から貰い

この秋は

ゆくりなくも

たっぷり

鈴虫の声を堪能できた

 

しかし

涼しくなり出すと

鈴虫というのは

はっきりと衰えを見せ出す

秋涼に敏感な草のようで

命の枯れ色を見せる

 

四十九日にまた寺を訪ね

叔父の納骨のことは

そこそこに

儀礼どおりに済ませて

鈴虫の礼を言い

ひとしきり

鈴虫の話となった

 

まだ三匹生きています

オスもいますが

もう鳴きませんね

そんなことを言うと

まだ生きてますか

寺のたくさんの鈴虫は

もうみんな死んでしまって

と聞かされた

 

コオロギと違って

か細い鈴虫は

なんだか

移動できる自由を

草葉がちょっと手に入れようと

わずかの期間

変身したような感じで

ちいさな草葉のように死んでいきますね

死骸が枯れ草のようです

 

そんなことを言ってみたが

伝わったか

どうか

移動できる自由を

ちょっと

手に入れてみた草葉

というイメージは

伝わらなかったかもしれない

 

卵の越冬は

そう神経質にならなくてもいいらしい

乾き過ぎないように

ラップでケースの上を覆って

温度も気にせずに

ほったらかしておく

と言う

 

うまくすれば

初夏に

卵から出てくるらしい

ちょっとは孵ってほしいと思うが

やけにいっぱい孵られても

手間が掛かりすぎる夏となろう

それも困るな

今から気にかかってくる




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