西の海の仮のこの世の浪の上になに宿るらむ秋の夜の月
後鳥羽院
あんなにいた鈴虫が
ついに死に絶えて
動くもののなくなった飼育ケースの中に
無残
とでもいうものを
見ている
無惨
ではなく
無残
動くものが絶えた
残っているものがない
という意味での
無残
ああ
これが秋!
鳴く虫たちはあたりまえに逝き
もう動くものはいない
鈴虫は
枯れ草のように逝き
逝き
逝き
遺骸を割り箸で拾うたび
なんと
枯れ草の端のようか
コスモスの乾いた種のようか
その草葉っぽさに
感心した
草葉がむかし
じぶんたちもちょっと移動してみたい
などと思い
変身してみたのが
たぶん
鈴虫
ただ鳴くのをやめて
よろよろとなって
憔悴して
ある日
ぴたりと動かなくなる
その草葉っぽさに
晩秋が
しおしおと来る
静かで
平穏な
無残
晩秋が
しおしおと来る
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