すてきなことはみんないつか終わるもの
村上春樹 『スプートニクの恋人』
24日
って
なんだったかな
なにか
あったような
そう
思いながら
手帖の
12月24日
という印刷を見続けるうち
思い出した!
クリスマスイヴ
では
ないか!
なんと
遠く
遠く
世俗の慣習から
離れてしまっている
ぼくの
アタマよ
こころよ
おいしいケーキを食べようと
楽しみにした頃も
あったではないか!
好きな子と
レストランで特別な料理を囲み
グラスを交わしたことも
あったではないか!
異国の田舎の家で
たくさんの人が集まって
食べきれないほどの
ご馳走に継ぐご馳走に舌鼓して
破裂しそうな腹を抱えて
朝を迎えたこともあったではないか!
ふたりだけの
渋谷での
宴のあとで
まだ開いている
ジュエリーショップで
若いガールフレンドに
けっこう値の張る指輪を選ばせて
買ってやったことも
あったではないか!
どれもこれも
遠くへ
はるかに
きれいさっぱりと消え去っていき
どんな経験も
したことのなかったような
12月24日が
また
来ている
楽しみにし
わけもなくうきうきし
その名のまわりで
こころの舞うに任せた
クリスマスイヴ
という言葉が
ぼくにはすっかり忘れられ切って
ぼくの知らない
ほかの人びとのあたまやこころのなかで
いまでは
舞い続けているのだろう
ぼくの個人史などと
関係なしに
ぼくの
理由のないわけではない
冷淡さや
不義理になど
関わらずに
うきうきし
こころを楽しませる人たちのところで
愛され
舞い続けてあれ
クリスマスイヴ
という
言葉よ
昔むかしの
楽しかったさまざまなことの
アルバムのような
言葉
クリスマスイヴ
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