De quel nom te nommer, heure trouble où nous sommes ?
Victor HUGO «Les Chants du crépuscule » 1835
寝室の隅の書棚には
フランス詩や英語詩のおもなものを
つねづね並べてある
暮れがた
寝室の窓を閉めに入ると
ほの暗い書棚のその隅から
こころを惹くものがあって
暗いあかりだけをつけて近づき
一冊を手に取ってみると
ヴィクトル・ユゴーの詩集
『薄明の歌』『内なる声』『光線と影』の
合本だった
近ごろ手に取っていなかったので
『薄明の歌』を開いてみると
プレリュードの冒頭には
どんな名でおまえを呼ぼうか
われわれのいるこの混乱した時代を?
と書かれていて
時代の悪政と戦い続けたユゴーの
面目躍如たる詩句が輝いている
おお! 悪政はびこる混乱の時代を
われらに先んじて生きた詩王ユゴーよ!
などと歌うのが
ま
ヴィクトル・ユゴー風ってことになるんだが
いまではもう
そんなご大層な
荘重な歌いっぷりをやれる時代ではない
時代の流れとともに
詩の口調はしぼみにしぼみ
ちっぽけな自嘲をちまちま書きつけるか
知的さを気取って冷たい言葉遊びをし続けるか
どこまでもナンセンスに徹してふざけ切るか
なにかのマニアを演じての
キチガイぶりを言葉でやらかすかしか
詩歌の路としては残っていない
とはいえ
詩歌ならばヴィクトル・ユゴー
そしてウォルト・ホイットマン
あるいは白楽天や蘇軾などの
中国古典詩しか学ぶべきものなしと
青年時代から方向を定めてきた私には
ああ!なんと懐かしいヴィクトル・ユゴー
ああ!なんと親しい時代遅れの大言壮語!
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