気ままな詩選を自分の愉しみのために。制作年代も意図も問わず、まちまちに。
ふたたび梅雨は
多くの思い出を雨滴ひとつひとつに込めて
声もなく
誰からも見つけられず
通奏されていく
澄んだ無邪気な流れを
守っていくだろう
幼児の足もとの水溜まりに
高い樹の梢のどこかから落ちた一滴が
小さな透いた波紋をひろげていくのを見て
わきに立っていた少年は
なんと老いてしまった自分か!
と驚き
人生で幾つめかの
突き抜けた嘆きに心を染めた
はやく戻らねばならないのに
少年はしばらく
幼児の手をとることさえ
できなかった
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