2023年8月11日金曜日

「わたしはもっと驚くべきことを言いたい」

 


 

ときに

マイスター・エックハルトは激しく言う

被造物一切からも

自分自身からも離れよ

 

そうすればそうするほど

時間にも空間にも触れることのない魂の火花の内で

あなたはますます統一される

浄福なものとなっていく

 

この火花はいかなる被造物も拒み

露わな神

神自身の内にある神以外には何も求めまい

 

この火花は

父にも子にも聖霊にも

すなわち

各々がその固有性にあるかぎり三位の位格(ペルソナ)にも

けっして満足することはない

わたしは真理にかけて言う

この光にとっては

神的本性が持つ

実りへの統合性も満足できるものではないと

 

さらに進んで

わたしはもっと驚くべきことを言いたい

わたしは善き真理にかけて

永遠で変わらぬ真理にかけて言いたい

 

この光は

単純にして静寂な神的存在

与えることも受けることもないこの存在にも

満足はしないだろう

  と

 

この光はむしろ

このような存在がどこに由来するのか

知ろうとして

単純なる根底へと

父であれ子であれ聖霊であれ

いかなる区別もうかがい知ることのできない

静寂なる沙漠へと赴こうとする

 

そして其処

だれも住む者のないその最内奥において

はじめて

この光は満ち足りる

 

その内では

この光は

それ自身の内にあるよりも

さらにいっそうの「内」に達する

というのも

根底である其処は

みずからの「内」にあって不動であり

ただ単純に

なんの形容も要しない静けさだからである

 

しかし

この不動性によって

事物というすべての事物は動かされ

それ自身において

知性的に生きるあらゆる命は受けとられる*



人間の言葉としては

本源について

おそらく

もっとも簡潔に語られた表現であろう

この短さで

このように言い表わすこと自体

驚くべきことと言える

 

しかし

わたしはマイスター・エックハルトのこの言に

言い添える

 

被造物一切からも

自分自身からも

離れる必要はない

 

それらはどれも

無でしかないのだから

離れる必要もない

 

無でしかないが

それらはそのまま

神そのものであるから

なおさら

離れるべきではない

 

無が神であり

至高のものに表裏しているということが

言葉と理屈で考える者には

なかなかわからない

 

わからない

ということが

そのまま

わかる

ということであるのが

なかなか

知られないように

 

たとえば

実になるという目的を担わされた花が

意味のない過程として

花のすがたや

花びらや

香りをすぐに脱ぎ捨てたいと思うだろうか

実を拠点として眺め返せば

それらは無だが

無はつねに花なのである

 

これが記されている時代の

世俗の人々には向かない内容を

いま

数百年後

これをたまたま目にするであろうあなたがたに向けて

このように

わたしは語った

 

言葉と人とものと

偶然にすれ違う旅人たちに幸いあれ

恩寵である認識に

多く恵まれんことを

 

 

 

 

*マイスター・エックハルト『魂のうちにある火花について(説教48)』。

『エックハルト説教集』(田島照久編訳、岩波文庫)の訳を元に改訳してある。

 

 




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