2023年8月29日火曜日

イエローとブラウンのものが

  

 

少し古い型の

家庭用の箱形の浴槽である。

 

しかし広めで

人がふたりほどはゆったり入れる

詰めて入れば

四人ほどは無理なく入れる

 

小倉遊亀が描いた

『浴女 その一』ぐらいに大きいが

浴槽の深さは

もうちょっとある

 

弟と入っていた

 

浴槽の底に

ふいに

なんとなくイエローを感知し

弟の顔に

けげんな影が走ったので

浴槽の底を見ると

イエローとブラウンがわだかまっている

 

「やったのか?」

と聞いても

はっきり「うん」とは

答えない

 

「おいおい

ちょっと……

なんで

こんなとこで

やっちゃうかなあ」

 

言いながら

左足をソッと浴槽の壁に引き寄せ

腕と右脚の力だけで

ゆっくりと立ち上がって

イエローとブラウンのものが

湯の中に拡散していく前に

なんとか

無事

浴槽の外へ脱出した

 

「うっかり

洩れちゃったんで……」

と弟が言うのを

聞いているうちに

夢からほわほわ覚めてきたが

その覚めぐあいが

イエローとブラウンのものの

ほわほわとした

拡散ぐあいに

なんだか

マッチしていた

 






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