2023年10月3日火曜日

ひゅうろろ

 

 

 

わたしのわたしは生まれ出ることさえないまま

流産

というのか

世界に触れもしないまま

わずか

繁みの草々のすきまの細い径を

見とがめられもせずに

(こんな監視だらけの世にあって猶まったくのインコグニト!)

ひゅうろろ

たいして音も立てずに

流れていく

つかのまの皮とその下の肉

 

しかし空も大気も土も類まれなる宝玉と知っているので

見聞きすべきものの

おお

なんたる多さよ!

 

世界はこうだと言う

世界はこうあるべきだと言う

世界はこうなっていくからこうせよと言う

そんな世界談義の人類居酒屋をやはり抜け出してしまって

わたしとわたしを呼ぶことにも慣れぬまま

今日もまた裸の動詞のわたし

 

主語の必要が

やはりわからないので

わたしのわたしは生まれ出ることさえない

 

ひゅうろろ

 

ひゅうろろ

 





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