わたしのわたしは生まれ出ることさえないまま
流産
というのか
世界に触れもしないまま
わずか
繁みの草々のすきまの細い径を
見とがめられもせずに
(こんな監視だらけの世にあって猶まったくのインコグニト!)
ひゅうろろ
たいして音も立てずに
流れていく
つかのまの皮とその下の肉
しかし空も大気も土も類まれなる宝玉と知っているので
見聞きすべきものの
おお
なんたる多さよ!
世界はこうだと言う
世界はこうあるべきだと言う
世界はこうなっていくからこうせよと言う
そんな世界談義の人類居酒屋をやはり抜け出してしまって
わたしとわたしを呼ぶことにも慣れぬまま
今日もまた裸の動詞のわたし
主語の必要が
やはりわからないので
わたしのわたしは生まれ出ることさえない
ひゅうろろ
ひゅうろろ
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