2023年11月5日日曜日

応無所住、而生其心

 

 

 

『金剛般若経』にいう

 

応無所住、而生其心

 

まさに住するところなくして

しかも

その心を生ずべし

 

これには逸話がある

 

中国の禅僧が

この言葉を

茶屋の老婆に教えた

 

功徳のあるありがたい教えだから

声に出して

おうむしょじゅう、にしょうごしん

日ごろ唱え続けなさい

と教えたのだ

 

老婆はこれを

おおむぎ・こむぎ・にしょう・ごごう

と聞き取って

そのように唱え続けた

 

そして

それなりの功徳を得た

という

 

言葉が違っていても

ありがたい教えを

信じ切って唱えるところが

重要なのだ

信仰重視の布教派は

この逸話を

評価する

 

しかし

この逸話の伝えるところは

もっと深い

 

応無所住、而生其心

 

まさに住するところなくして

しかも

その心を生ずべし

 

この意を

老婆の行為自体が

じつに

よく表わしているからだ

 

『金剛般若経』の文言は

「住するところ」のひとつを表わす

そんな「住するところ」の違いに左右されず

「心を生」じている点にポイントがある

力を発揮するのに

物理的な力のきっかけとなるものに頼らず

念の力だけで世界と渡りあえ

という

魔術の極北の教えがある

 





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