2023年11月22日水曜日

ティーカップまわれまわるさびしさ

 

 

 

歩けば

6分や7分ほどで

後楽園のTOKYO DOME CITYに着く

 

アトラクション

と今日日は呼ばれる

いろいろな乗り物や遊具にはまったく興味はないけれども

そこそこ便利な売店がいっぱい集まっているので

いつのまにか

けっこうな頻度で買い物に行くようになった

 

ユニクロも無印良品もカルディもダイソーも成城石井も

けっこう高いがそれでも安いものもある魚屋も

TOKYO DOME CITYにはある

 

白山通りを渡れば

むこうにはドン・キホーテがある

 

これらが10分圏内にある

というのは

けっこう強みだ

 

買い物の必要が特になくても

ドン・キホーテなど見てまわっていると

あれやこれや

なんとなく買っておこうかな

などと思う

 

カルディでも

こまごまと並ぶエスニックフードのあれこれを見ていると

アジアの未知の食材を試してみようかな

などとカゴに入れはじめる

 

どれもこれもあれもそれも

なくてもいっこうかまわないものだが

なくてもいいものを試してみるのは楽しいし

なくてもいいものを買ってみるのは楽しい

読む必要のないモンテーニュを広げてみたり

復習する必要のない微分積分の本を買ってみたり

生きる必要のない昭和平成令和の日本に

物見遊山のつもりでだらだらと滞留し続けてみたり

そもそものはじまりから言って価値も意義もない

太陽系や銀河系や存在界なるものの内部体験を

物好きにも馬鹿まる出しにやってみているように

買っていって試してみるのは楽しい

 

ふと気がつけば

いつのまにかクリスマスの飾りつけでいっぱいで

どこの店内もTOKYO DOME CITYのあちこちも

電飾だの照明だの赤白の葉や紙でいっぱい

アトラクションからは楽しげなオルゴール音が鳴り

通路や階段からもなんやかや音楽が鳴って

虚栄と虚飾そのものであってもなんだか楽しげで

ふと思い出してしまう永井陽子のあの短歌

 

夜は夜のあかりにまわるティーカップティーカップまわれまわるさびしさ

 

ああ

ふり返ってみれば

日本中からばかりか

いまや世界中から観光に来るポイントの

間近に住んで

季節季節のにぎわいを

そのままじぶんの風景として

ドン・キホーテだのカルディだので

まだ味わったことのない珍味を物色していたりする

なんと軽佻浮薄なしあわせ

なんと現代日本

なんとバビロン

なんとソドム

なんとゴモラ

 

中原中也ふうに言えば

ただもうラアラア唱ってゆくのだ

ただもうラアラア唱ってゆくのだ*

 

 



 

*中原中也「都会の夏の夜」(詩集「山羊の歌」所収)

 

 




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