2024年1月11日木曜日

二人よりは一人見る海

 


 

ニュースで報じられることなど

ぜんぶ放って

すべてに

無関係みたいに

現代

なんて

生きてないみたいに

 

冬の海に行って

しばらく

寒い風に吹かれていたけれど

 

ほんとうに寒くって

鼻水が出てきて

海風

じゃなくて

海風邪

引いちゃったかな?

なんて

思っちゃって

 

ひとりでした

 

ひとり

冬の海って

すごい

 

だれも

話すひとがいないどころか

だれにも

繕う顔がいらない

 

繕う顔がいらないと

顔って

なくなるものなんです

気持ちよく

 

顔なし

 

でも

宮崎駿のあれじゃ

なくって

 

中島みゆきの「時刻表」

思い出したなぁ

 

海を見たと言っても

テレビのなかでだけ

今夜じゅうに行って来れる

海はどこだろう

ひとの

流れのなかで

そっと

時刻表を見上げる

 

雑踏

ということばが

ほんとうに合うような

都心の駅では

海まで行く列車の

時刻表なんて

ほんとは

見れないんだけどね

 

それは

それで

いい

んだけど

 

あかるいうちも

暮れてきてからも

浜が

すっかり闇になってからも

海を

見ていました

 

ずっと

続けてでは

ないよ

 

あったかい部屋に入ったり

ものを食べたり

お風呂だって

入ったり

したけれど

海に

向かう

こころがまたできあがってくると

また

浜に出てくるんだ

また

 

くりかえしていました

それを

 

そんなことを

 

風の音が胸をゆする

泣け

とばかりに

 

「津軽海峡冬景色」は

唄うけれど

あの唄の場合

連絡船のなかにいるのね

船のなかにいて

風の音だけ聞いている

 

外にいたら

風の音は

泣け

なんて

吹かないよ

 

海にじかに向かうと

泣け

なんて

風は聞こえない

 

それはもう

人界で通貨となりうることばや

感情などとは

ぜんぜん

別の

つよく

冷たい

ひっきりなしの

圧力だ

 

ちょっと

風が弱まったりすると

思い出したのは

むしろ

蒔田さくら子の

こんな短歌

 

二人よりは一人見る海一人より亡きものと見る海こそよけれ

 






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