2024年10月5日土曜日

北千住駅をフワッと歩く藍色のスカート

 

 

 

用事の帰り

ゆうぐれ

ひともまばらな常磐線に乗って

一車両に数人しかいないのをさいわい

バッグふたつを

わきの席の上において

うとうと

 

それでも

なにか読もうかと思って

バッグに入れていた

語彙習得用のフランス語の大判の語学書を開いて

ぱらぱら

 

必須語彙を網羅した習得本らしいのに

フランスで作られた本で

ところどころ

説明は意外にむずかしいフランス語で書かれていたりして

とても並みの学習者には読めないはず

いったいだれに向けた本なのだか

よくわからない

不思議で

奇妙な

読みざわりを感じながら

ぱらぱら

 

でも

うとうと

うとうと

 

なにせ

二時間ほどしか眠らず迎えた日の

ゆうぐれだから

うとうと

 

途中

ひとがちょっと乗り込んできた駅があったので

ぼんやりホームを見ると

北千住だった

 

降りない

 

むかし

下北沢へ帰宅していた頃は

ここで乗り換えて

ながながと千代田線に乗って

うんざりしながら

帰ったこともあった

 

もうちょっと

むかしでないむかし

三軒茶屋へ帰宅していた頃は

ここで乗り換えて

そこそこ

大手町まで乗って

半蔵門線に乗り換えて

やっぱりそこそこ

長い距離を

揺られていったこともあった

時には曳舟や押上方面から

ダイレクトに三軒茶屋に向かうこともあったが

これは

長すぎて長すぎて

飽きた

 

若かった

そんなむかしや

もうすこし

若さの減じた

もうすこしむかしでないむかしには

北千住で降りて

駅ビルのいろいろな店を覗いてみたり

回転寿司なんか

ちょっと食べて帰ってみたり

それはそれで

けっこう楽しかった

ひとりだったが

楽しいゆうぐれだった

いつも絶えないひとびとの雑踏が

エネルギーになった

 

降りない

いまはもう

 

たまには

むかしのように

降りてみても

いいかな

と思う

 

降りない

いまはもう

 

そうして

やはり

ちょっとうとうと

し続けながら

じぶんのことでない

じぶんの言葉でもない

あいみょんのこんな言葉を

思い出したりする

 

北千住駅をフワッと歩く

藍色のスカート

いつになく遠く遠くに見える

加速する足音

 

素直じゃないと

いけないような気がしたよ*

 

いつになく

遠く

遠くに見える

北千住駅

 

焦らないでいい

いつか花束になっておくれよ

ぼくらはなにも見えない

未来を誓いあった

 

どんな未来が

こちらを覗いているかな

きみの強さと

ぼくの弱さをわけあえば

どんな凄いことが起きるかな?

ほら もうこんなにもしあわせ

いつかはひとり いつかはふたり

いや もっと もっと 

大切を増やしていこう*

 

どんな凄いことが起きるかな?

若者たちよ

生きよ

きみらの強さと

きみらの弱さをわけあえば

ほら

もうこんなにも

しあわせ

 

 

 

 

*あいみょん 『ハルノヒ』 (2019)

https://www.youtube.com/watch?v=pfGI91CFtRg

 

 





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