2014年6月29日日曜日

いま入道雲が



重大そうなことが起こるが
重大なことなど起こらない
重大だと騒ぐ人は絶えない
重大だと儲かる人らがいて
重大だと活力が湧く人らも

いま入道雲が
何層にも重なって
めずらしいほど
色合いを重ねながら
一瞬太陽を隠したと見る間に
崩れていった
その後すぐ
目の前のオリーブの枝葉を
アオスジアゲハと
クロアゲハが
交差しあいながら
ひととき舞って
去っていった

重大だと
これを言う人はいないし
たぶん
だれにも
伝わりもしない

重大だといわれず
だれにも伝わらず
動きを
やめない

雲も
チョウたちも





2014年6月28日土曜日

押しつけちゃったな




ひさしぶりに
ラム肉を
ちょっと多めに
食べるので

合うだろうかな
合うといいがなと
寝かしておいた
マルゴーを開ける

うるさい主張などない
地味なしっかりさ
媚など売らない
ワインの風格

合う
合わない
でなく
合わせろよ
でもなく

飲みきれず
少し残ったので
翌晩は
がらっと変わって
台湾産解凍サンマの
塩焼きと一緒に
マルゴー

マルゴーには
悪かったけれど
サンマの塩焼きと
一緒に飲むのは
確かに
もっと下衆な
粗雑な味わいのもので
いいようでしたな

サンマ体験を
マルゴーに
押しつけちゃったな

初体験
だったかな




白い小さなあの廃墟を




長い短さを手繰り続け
海の近い溝に行きあたって
それでも涼しい風が
いくらか抜ける
道路標識の下

なんの鳥かが
上空から落としたのか
小さなカワハギが
のっぺり
ぺったり
埃を薄くかぶって
落ちている

夏が来るのだ
まだ来る

使いかけのノートを
バッグから取り出したものの
新しいページを開かずに
また閉じてしまう
書きつけてもいいことはあるが
書きつけるべきことはなく
ヒトデを取りに
海に出るほうが先だと思う

捨ててきた家の下駄箱の上に
ひとつ
乾いたヒトデを置いてきた
あれを海水につけて
戻してやりたいと思うが
それはまた
いつか
そのうち

しめっぽい
大言壮語を続けている
都会人たちのあいだを抜けて
からからに乾いた
白い小さなあの廃墟を
取りに戻る
きっと




2014年6月27日金曜日

ようやくの生成への一歩は



価値があるかどうか
主張したり
批判したりしても
意味がない

あいつがあのようであるんだから
あのようであることが
あいつの価値

おれがこのようであるんだから
このようであることが
おれの価値

あいつの価値と
おれの価値とは
永遠に相容れない
平行線のまゝ

―と
言いきってしまえば
まるである種のポエムのようで
まるで政治家の講演会のようで
まるでコメンテーターのようで
うそ

すべてはここからだ
ことばらしい
ことばたりうるかもしれない
ことばの
種子の
ようやくの
生成への
一歩は

あいつがあのようであるとしても
あのようであることが
あいつの価値
ではなくて

おれがこのようであるとしても
このようであることが
おれの価値
ではなくて

ここからだ

ようやくの
生成への
一歩は




後になって



せっかく無言があるのに
ことばなんかを

水に
すこし離れた
よどみのあたりに
投げ込んで

飛ぶ
かわせみ
しぶき

ひとりでいても
いなくても

見てもおらず
見られてもいない
いもしない
(と後で思い返すような
時があって

だれだろう、わたし
なんだろう、わたし

―そんな
くだらない
問いなどしない

後になってするのだ

くだらない
内省など
架空の自我への
すり寄りなど





うすら明るい湖の一帯



〈はげしさ〉が
どうやら
一息ついているらしい
湖に突き出た
小島

日も暮れたというのに
地形の妙から
いつも小一時間ほど
うすら明るい
湖の一帯

片手に(あの影は)
きっと帽子なんか抓まんで
〈はげしさ〉の奴
なかなか大人っぽい
うらさびしさ

うすら明るい
湖の小一時間がいい
まるで生涯なんて
この時間だけのために
ある枠組みみたいに

ここでグラスなんかを
持ち出したり
ライターをシュボッと点けるのは
たゞのおやじ
なんであれモノに頼るのは

酒も飲まず
煙草に火もつけず
水ぐらいはあっていいが
なくって喉が渇くのがいい
唇が渇くのがいい

うすら明るい
湖の一帯で
小一時間ほど影となり
闇となっていく
闇の中の闇の闇へと




だあれもいない 



朝昼晩
食べられて
しあわせ

ちょろっと
芽吹いた
あの草
この草
見られて
さわれて
しあわせ
しあわせ

電車の中では
ぼんやり
居眠り
ホームに出ると
足どり
ふらふら
人むれに
ぼんやり
ついてく
しあわせ
しあわせ

家にきて
だあれもいない
しあわせ
しあわせ
しずかで
暗くて
音もしない
廊下に
風呂に
トイレに
居間に
だあれもいない
わたしもいない
みいんないない
しあわせ
しあわせ





2014年6月26日木曜日

アタマきらきら、心きらきら



涼しさを求めるのも
青二才のうち
かき氷に
高濃度アルコールをかけて

でも
燃やしはしないで
炎天下の桟橋に
お仕置きよ

お仕置きよ
放っておく
燃えちゃうなら
燃えちゃえば

燃えちゃえ!
燃えちゃえ!

聞かれちゃった? 
そこの
水中をひょろぉっと
抜けていった魚に

大洋に広まっていく
うわさ話の
ひょろぉっと
ブルーきれいに輝いて

暑さ寒さも此岸だけ
滅却すべき心頭も
透け透けになっちまって
アタマきらきら、心きらきら

燃えちゃえ!
燃えちゃえ!




まぁなにがあるか 知れない 知れない



計画どおりに運んでいるようですね
立案から九年ほどで
なかなか見事な進みぐあい
もっとも
どんな支障が出るか知れない
現実というのは
用意周到なあなたがたにとっても
そう易々といい目ばかりを見せてはくれない
予期もしない裏切りとか
自然災害がわざわいするとか
まぁなにがあるか
知れない
知れない

二〇〇五年一〇月二十五日
ホテル・キャピトル東急での政策研究会
名づけて
〈日本と中国をどのようにして戦争に突入させるか、そのプラン作り〉

参加者は
クリストファー・デムス(AEI所長)
安倍晋三(次期総理)
鶴岡公二(外務省総合政策局審議官)
山口昇(防衛庁防衛研究所副所長 陸将補)
前原誠司(民主党前党首)
ほか自民党・民主党複数議員

基本計画プランの例としては
日本海側に米軍ミサイルを着弾させ死傷者を出し
北朝鮮からのものと報じさせて
国内世論を戦争に一気に傾かせ治安維持体制を確立

京都大阪付近で
米軍と自衛隊による新幹線爆破を実行し
北朝鮮ないしはイスラム過激派によるテロと報じ
戒厳令体制を敷いて
戦争への傾斜を加速させる

などなど
などなど

計画どおりに運んでいるようですね
立案から九年ほどで
なかなか見事な進みぐあい
もっとも
多少の変更は余儀なくされたようだし
まだまだ変更するようだが

ネオコンに知り合いがいるのを
知らなかった?
知らなかったよね
そりゃあね
そりゃあね

無意味に意味不明みたいな詩を書いていると
思っていた?
知らなかったよね
そりゃあね
そりゃあね

ジョゼフ・ナイが作成した対日超党派報告書にはこうある
ハーバード大学ケネディ行政大学院院長のナイのあれ
Bipartisan report concerning Japanにね

東シナ海・日本海には未開発の石油や天然ガスがあり
総量はサウジアラビア一国のそれに匹敵する
アメリカはそれを獲得しなければならない

台湾と中国が軍事紛争を起こした時がチャンスとなる
アメリカは台湾側に立ち
アメリカ・日本・台湾は中国と戦う

中国軍は沖縄と本土の軍事基地を攻撃してくる
軍機の離発着拠点と補給地点を破壊するためである

本土攻撃を受けた日本人は
戦争反対者や平和主義者も含めてたじろぎ逆上し
日本国憲法の非戦主義は自ずと霧消して国民は戦争になだれ込む

アメリカ軍はしだいに退き
日本への援助を減少させていき
日本と中国の戦争として発展させていくよう導く

日中戦争がさらに激化してから
アメリカは和平交渉を持ちかけ
東シナ海や日本海へのPKO活動に入る
治安維持活動の下で
アメリカはエネルギー開発の主導権をとり
アメリカの資源獲得となる

ナイの論文をもとに
アーミテージはレポートを作成したが
自衛隊海外派兵を自由化せよ
との内容
集団的自衛権の名で
それがようやく実ろうとしているわけだが
中国には中国担当の者たちが入りこんでいるので
彼らがどう動くか
どのくらい早く動くかにもよっている
中国をどう動かすか
いちばん大きな部分は
それにかかっているのだが
それまでに日本の側のタガをぜんぶ外しておかないと
動くに動けないことになるからね

この夏には
サインとなる動きが出て
秋には
もう少しはっきりし
来年になれば
本格的な始動になる
二〇一五年以降は
中国への旅はできなくなりますねと
たびたび
言われている

北朝鮮を使わなくても
中国だけ動かせば
という案もあるにはあるが
日本海に関わるすべての国を
アメリカは抑え込みたいのだから
北朝鮮と韓国も巻き込んで
日本と中国のかなりひどい紛争を長引かせるだろう
北朝鮮を支配するのは容易
一日で全滅させる作戦はできているし
より効果的なものへと
再三更新し続けられている

とはいえ
予期もしない裏切りとか
自然災害がわざわいするとか
まぁなにがあるか
知れない
知れない





神のお褒めに



過ごしやすくなった夕暮れの
朝顔の蔭で
歯磨きする動物
髪をとかす植物
あくびする細菌

かれらをびっくりさせないように
晩餐のための
同国人を一体屠殺しています
首の動脈を切って血抜きするのがふつうですが
ふと肝臓を刃で貫きたくなる時があって
今日はそうしています
腎臓も貫いてみています

苦しんでいますね

でも
どんなに苦しんだところで数十分で死ぬのですし
わざと生きながらえさせたところで
三時間後の晩餐までには息絶えるのです
息絶えるどころか
体のかたちも留めぬぶつ切りの肉塊となって
ずいぶん熱いソースの中や
鉄板の上で湯気を立てたりしているはずです

いちばん倫理的な肉食は
なんといっても身内や同郷人や同国人を食することです
それに気づいたのは
かれこれ三〇年ほど前のことでしたか
すぐにそうし始めたわけではなく
しばらくは他の動物や異国人を食べ続けていたのでしたが
この数年来は同国人を食材とするのに切り替えました
ずいぶん褒められるべき聖なる行為ではないか
そう自画自賛しております
同種の枠組みの中だけで食を解決するのは
宇宙的に画期的なことだと
神のお褒めに与れるものと確信しております