2019年11月23日土曜日

たぶんあさっても



自動エレベーターのボタン押す手がふと迷ふ真実ゆきたき階などあらず
富小路禎子


目覚まし時計はときどき
ふいに壊れる
鳴らない朝がなんどかあって
不思議とそういう時には自然と目は覚め
遅れないで出かけていったりしたが
眠り込んでしまっていたらどうしただろう
と考えると不安になって
そのたびにひとつずつ
買い足していったような気がする

いまも四つや五つ
目覚まし時計は枕元にあるが
寝る時間のあまりとれない夜など
ぜんぶに目覚ましをかけて
遅刻しないようにと準備しておく
そんなにいくつも目覚ましをかけて
いったいどこへと起きていこうとするのか
起きていくべきほどのところが
ほんとうにどこかにあるのか
あるとでも信じているのか

わからないまゝ
いくつも目覚ましをかけて
また
きょうも
あしたも
たぶん
あさっても




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