2021年1月23日土曜日

玄関からずいぶん長くのびた廊下

  

お化けばなしを聞いていたら

入居した中古マンションの玄関からのびる廊下のはなしで

三歳の娘が長いその廊下の奥の隅で

いつもひとりでだれかとしゃべっているのだとか

 

娘だけに見えるだれかがそこにいるかのようで

あるとき娘はお父さんに

オネエサンがうちに入ってきていいか?って言ってるけど

お父さん、いい?

と真顔で聞いてきたので

お父さんはとっさに恐くなって

「わるいけどそれはダメ」と答えたそうな

 

もう十数年以上前に横浜のほうに住まいをさがして

妻と訪れてみた集合住宅の面積の広い物件も

玄関からずいぶん廊下が長くのびていて

しかも明かりをつけてもなんとなく暗くて

ここに住んでみたらこの暗さに慣れるのだろうかな

などと不安に思ったものだった

廊下を奥まで進むと広いサロンに出て

そこからは建物の前の公園や森や山が見えて

なかなか気持ちのよい眺めだったのだが

職場には遠すぎるということで結局は住まなかった

けれども長い廊下のはなしを聞いたりすると

すぐに記憶に蘇ってくるのは住まなかったそこの廊下

 

たくさんの物件をあれこれ見てまわったし

少なからぬ数の住まいを移り住んできたので

廊下のはなしといえば他にもいろいろあるけれども

それらについては

また

べつの機会に





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