2022年9月7日水曜日

もう地の色も見えなくなったボディのように


 

 

いちども鏡のなかに

愛すべき

理想のわたしなど

見たことはない

いとおしい

大切な顔を見てとったことなど

ない

 

しかし

古今東西の美しいもの

美しいとわたしに感じられるもの

滋味にあふれ

謎に幾重にも覆われて

意味ぶかく

無限の価値あるものとわたしに思える

無数の表象や言葉や

風景

雰囲気を追い続けているので

わたしの内面は

いつも

それらで溢れんばかり

 

わたしにとってのわたしは

それら

ひとつひとつであり

それらの集積庫

 

そうして

粗衣粗食の

古くなって首まわりのほつれたTシャツなど

捨てずに好んで使う

破衣の

寝起きの際など

まさしく弊衣蓬髪の

わたしの顔を

至上の美や貴重な遺跡を求めて

泥沼にたっぷり浸かり

砂嵐に体じゅうをヤスリで削られ

毒虫や毒獣だらけの密林を駆け抜け続ける

冒険家たち

探求者たちの

汚れに汚れた4WD

もう地の色も見えなくなったボディのように

見るのだ

今日も鏡のなかに





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