いちども鏡のなかに
愛すべき
理想のわたしなど
見たことはない
いとおしい
大切な顔を見てとったことなど
ない
しかし
古今東西の美しいもの
美しいとわたしに感じられるもの
滋味にあふれ
謎に幾重にも覆われて
意味ぶかく
無限の価値あるものとわたしに思える
無数の表象や言葉や
風景
雰囲気を追い続けているので
わたしの内面は
いつも
それらで溢れんばかり
わたしにとってのわたしは
それら
ひとつひとつであり
それらの集積庫
そうして
粗衣粗食の
古くなって首まわりのほつれたTシャツなど
捨てずに好んで使う
破衣の
寝起きの際など
まさしく弊衣蓬髪の
わたしの顔を
至上の美や貴重な遺跡を求めて
泥沼にたっぷり浸かり
砂嵐に体じゅうをヤスリで削られ
毒虫や毒獣だらけの密林を駆け抜け続ける
冒険家たち
探求者たちの
汚れに汚れた4WDの
もう地の色も見えなくなったボディのように
見るのだ
今日も鏡のなかに
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