2023年1月15日日曜日

ほう…


 

 

ガンで悪液質になってきている

という

坂本龍一が

高橋幸宏の死を

悲しんでいる

という

ちょっと遠まわりなニュースを

スマホのスマートニュースで見かけた

 

ほう…

 

このニュースのリアリティーが成立するためには

高橋幸宏が死んでいることにならなければならないが

そんなニュースは

まだ

目にしていない…

 

そう思って

「高橋幸宏」をググったら

(Google検索が

DSに有利な世論形成のための検閲や誘導のメッカであることは

もう何年も前から常識で

Google検索は使うな!

というのはネット使用者の常識ながら

「高橋幸宏」検索の場合は不利益は少ない)

どうやら死んだらしい

とわかる記事が

ちらほら出ていた

 

あの頃…

YMO現象の真っ盛りだった

あの頃…

 

街を歩けば

喫茶店に入れば

テレビをつければ

ラジオをつければ

嫌でも

多少はポップスが耳に入ってくる時代に

YMOという

インベーダーゲームの効果音を楽曲化したようなものばかり

演奏する三人組が出てきて

イヤだな…

という印象を持っていた

 

1978年のアルバム「イエロー・マジック・オーケストラ」

1979年のアルバム「ソリッド・ステート・サヴァイヴァー」

1980年のアルバム「増殖」

この三枚のアルバムの圧倒的な人気で

一気に

巷にYMOばかりが流れ続ける時代になった

 

イヤだな…

ひしひし

感じていた

 

その頃

ぼくは小林秀雄全集をほぼ読み終えて

なにを見るにも判断するにも評価するにも

小林秀雄のメガネを通していた

ランボーの文体にもかぶれ切っていたが

ランボーは小林秀雄の文体に包含されてしまうし

人生の中心に据えていたバルザックの文体は

あらゆるものを許容し飲み込む大海のごとき文体なので

ぼくの個人的な発語は

かえって影響されないでいた

 

そうするうち

ドゥルーズの文体と

ル・クレジオの文体

あわせて

石川淳の嵐が襲いかかってきて

1979年―1980年の『石川淳選集』全17巻(岩波書店)の衝撃に

毎月毎月飲み込まれるようになる

1980年に『狂風記』上下が出版された頃には

ぼくの文体も趣味も石川淳化され切って

永井荷風ふうではなく

石川淳ふうの江戸趣味まで発症するに至ったが

この頃は

ドゥルーズ+ル・クレジオ+石川淳のアマルガム文体で

あらゆるものを

ぼくは考え語り書き社会批評をしていた

 

石川淳の文体から抜け出るのには約20年かかり

この石川淳病を治療するために

柄谷行人の文体と

『墓のかなたからの回想』のシャトーブリアンの文体を

ぼくは長々と必要とした

シャトーブリアン文体は

治療薬として

ぼくの言語野に侵入してきたのだった

 

ぼくのあらゆる判断力のベースを成した

小林秀雄は

1983年3月1日に80歳で死ぬ

小林秀雄に評価してもらえるようなものだけを書きたい

と思っていた

ぼくのファンタスムの時代の

終わり

 

1983年4月

眠りから覚める時にぼくは

はっきりした男性の声で

「すぐにエレーヌさんに電話しろ!」と告げられる

そうしてその日

一度だけ学生の集まりの中で出会って

電話番号を控えていたエレーヌ・グルナックに

自分でも意味のわからない

必要もない

しかし「声」に命じられた奇妙な電話をかけ

ここから

30年にわたるエレーヌとの関わりが始まる

 

ぼくの人生が

すべて超常現象のみを基盤として動いているというのは

こうした出来事で

人生の各所で

ふいの方向転換をさせられてきたためだ

 

1983年12月22日

YMOは日本武道館でチャリティー・コンサートを行ない

YMOとしての活動を停止する

 

最初から

最後まで

ぼくにとっては

 

ほう…

 

というだけの存在が

YMOだった

 

ちなみに

新座の立教高校を卒業したぼくにとって

同高校を卒業した

高橋幸宏も

細野晴臣も

ついでに

佐野元春も

先輩にあたっている

 

イギリスの学校そのものを実現したかのような

薔薇と芝生とポプラ並木と

広大なキャンバスと

味のある校舎と礼拝堂と

日本屈指のパイプオルガンを備えた

自由奔放で

ユーモアとゆとりに富む

あの新座の立教高校の雰囲気の中で

高橋幸宏も

細野晴臣も

3年間を過ごしたのかと思うと

やはり

 

ほう…

 

と洩らしたくなるが

故郷を同じくする人どうしのように

わかる気がするところもある

 

バイロンのように

かつて自分がいた学校を

そろそろ

歌ってもいい頃かも

しれない






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