2025年4月7日月曜日

旅はもう旅とも呼べぬ旅



 

脇道や寄り道やまわり道は

しばしば

脇未知や寄り未知でまわり未知で

ふいの深みに入り込む

恰好の扉や入り口であったりもするものの

深みをそのまま価値と信じた

若さのゆえの心の浅さも

ところどころ干からびてくる頃には

脇道や寄り道やまわり道のどれもこれもが

じつはただの

脇道や寄り道やまわり道と呼ぶべきものに過ぎなかったと

散りはじめる桜の花びらのひとつひとつのように

はらはらとわかってくる

本道に帰ろう!

幹線道路に戻ろう!

などと思う気概さえもはらはらと

見ようによってはうつくしく

ひたすら儚く散りつづけて

旅はもう旅とも呼べぬ旅

若ければ底知れぬ魅力もあるさまよいも

もはや果ての果て

かつて此処にはわたくしというものありきと

胸や頭に触れてみても

いずれ焼かれて捲れ上がっていく肌が

まだ温もりを保って

いくらか皮脂を湛えてあるばかり

 

 





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