2026年9月2日水曜日

酔うことはない


 

 

酒場だが

そこそこ立派な建物だ

といえる

 

太い木材を使った建築で

二階の席には

手すりに寄りかかって飲んでいる客もいる

 

座れる席は

いくらも見つかるが

ほぼ

満員と見えた

 

一階でも

二階でも

客たちはみな

すでに

ずいぶん飲んでいる

ようだった

 

身を前に倒し気味にして

コップやグラスを握っている者もいたし

元気そうに胸を張って

飲み続けている者もいたが

かなり寄っているのがわかった

 

だれか探しているかのように

ゆっくりと

進んだり

止まったり

時には後退したりしながら

わたしひとり

一滴も飲んでおらず

もちろん酔ってもおらず

歩きまわっていた

 

座って飲んでいる者も

立ったまま飲んでいる者も

飲み疲れて

テーブルに肘をついて休んでいる者も

歩いていくわたしを見ると

なぜこいつだけは酔っていないのか?と

いくらか

視線に敵意を帯びさせた

 

とはいえ

だれもみな

酔ってちからの芯が萎えていたので

恐れる必要はなかった

 

そろそろ

わたしもなにか飲もうか?

そう思いながら

ともに飲むのによさそうな女を

さがした

 

男と女で

いっしょに飲むのだけが

しきたりのようになっている店なのだ

 

そろそろ

飲もうか?

 

だれと飲もうか?

 

なにを飲もうか?

 

そう思いながら

ひとりでいる女をさがして

歩き続けるのだが

飲んだところで酔わないだろう

 

酔ったことがないのだ

 

飲んでも

酔ったことがない

 

飲む時はいつも

飲むのにつかれてやめるか

飽きてやめる

 

酔うことはない

 

どうして人びとが

こんな容易に

酔うことができるのか

わからない

 

 

 

……かなり長いこと見ていた

夢の

話である





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